連載二郎クエスト第1回「二郎はラーメンではない」は本当か?

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クエスション

ラーメン二郎ファン、通称「ジロリアン」の間では、「二郎はラーメンではなく、二郎という食べ物なのだ。」という格言がある。これはどういう意味なのか?本当にそうなのか?

アンサー

答えは「二郎はラーメンではなく、二郎という食べ物なのだ。」です。二郎はラーメンではありません。正確に言うと、ラーメンという括りではラーメン二郎は定義できないのです。ラーメンには多種多様な種類があり、一括りに出来る料理ではないためです。

この命題に立ち向かう前に、まず「ラーメン」とは何かについて考えてみてください。あなたにとって、「ラーメンとは」と問われて、真っ先にどのような料理が思い浮かびますか?

ラーメンが持つ多様性の文化

あなたにとって、代表的なラーメンとは、どのようなものを思い浮かべますか?

「中華麺」と言われるように、中華麺に醤油スープをかけたシンプルなラーメンを思い浮かべた人もいるでしょう。

(画像1.しょうゆラーメン)

しょうゆラーメン

「カップヌードル」のように、お湯をかけてすぐに食べられるインスタント食品を思い浮かべたという人もいるでしょう。

(画像2.日清カップヌードル)

日清カップヌードル

「味噌ラーメン」のように、味噌や野菜ベースでスープを作ったラーメンを思い浮かべた人もいるでしょう。

(画像3.味噌ラーメン)

味噌ラーメン

「豚骨ラーメン」のように、豚骨を長時間煮出したこってりスープのラーメンを思い浮かべた人もいるでしょう。

(画像4.豚骨ラーメン)

豚骨ラーメン

その他、つけ麺や油そばといった料理も存在しており、その種類には枚挙にいとまがありません。同じラーメン店を掲げていても、十人十色、千差万別、人の数だけラーメンの種類があるといっても過言ではありません。

この背景には、ラーメン屋がラーメン業界の中でどう生き残っていくかを絶えず追及してきたことがあります。

他店との差別化が成功の鍵を握ってきたラーメン業界

一般的に外食産業という業界は、一部の大手企業が資本力を活かして店舗を拡大し、上位企業が大多数のシェアを握る「寡占市場」の状態になることが多いです。例えば、ハンバーガーチェーンや丼ぶりチェーンに代表されるように、少数の大企業が大多数の売上シェアを握っています。図1および図2はそれぞれハンバーガーチェーン、丼ぶりチェーンの店舗数トップ10です。図を見て分かるように、トップ3の大手が8割方を占めており、業界のシェアを多く握っています。

図1.ハンバーガーチェーンの店舗数トップ10(日本国内)

図2.丼ぶりチェーンの店舗数トップ10(日本国内)

一方で、ラーメン業界においてはその例に反します。図3はラーメン業界の店舗数トップ10です。前に見た「寡占市場」であるハンバーガー業界や丼ぶり業界とはグラフの様相が異なり、トップ3を見ても5割程度のシェアに留まっており、トップ10から除外された企業も、多くの店が出店しています。

図3.ラーメン業界の店舗数トップ10(日本国内)

この現象は、ラーメン屋が多種多様な顧客ニーズを満たしていくために、他店と差別化を図ることで顧客を保ち続けてきた結果です。例えば、天然とんこつラーメンの店を全国に展開する「一蘭」ではカウンター席、他客との仕切り、記入方式によるオーダーシステムといった、他のラーメン屋には無い画期的なサービスを展開し、唯一無二のラーメン屋で顧客ニーズを満足し、全国展開に成功しています。

ラーメン二郎で言うと、本店で修業をした者のみが暖簾分けで店を出すことを許され、デカ盛りや脂ギッシュが特徴のラーメンで、他のラーメン屋には無い独自の顧客ニーズを満足しているのです。

つまり、ラーメン業界においては大企業が資本の力を以てしても、顧客のニーズを満たすことが難しいのです。

この現象を経営学の手法「アドバンテージ・マトリックス」で説明すると、ハンバーガーチェーンや牛丼チェーンのような寡占市場を「規模型事業」と呼び、顧客のニーズがそれほど多様化していないため、大企業が資本の力で薄利多売をすることで優位とされています。一方で、ラーメン業界のように大資本が必ずしも優位に立たず、それぞれの店が独自の手法で顧客を拡大していき、大きな収益をあげることのできる市場を「分散型事業」と呼びます。ラーメン業界で成功している店は、独自の手法で資本力に頼らない成功を収め、その多種多様なニーズに応え続けたのです。他では真似できない独自のラーメンを提供することで、高い利益率を確保できるのです。また、違った見方によるとラーメン屋の企業努力によって、ラーメン好きの多種多様なニーズが誕生したと言うこともできます。

「ジロリアン」にとって唯一無二である「二郎」

話を元に戻すと、「ラーメン二郎とは何か?」という問いに対して、「ラーメン」であると言う答えは余りにも乱暴になるわけです。出題者と回答者の頭の中で全く違う「ラーメン」が存在しているため、一言に「二郎はラーメンではなく、二郎という食べ物なのだ」と言えるわけです。

しかし、この多様性こそがラーメンがここまで日本国民に愛された大きな要因でもあるのです。皆が皆、違ったラーメンを好むからこそ、色々な種類のラーメン屋が存在し、ラーメン屋もまた、そんな多種多様なニーズに応えるべく、日々営業努力を惜しまないのです。

まとめ

ラーメン二郎は食べる人を選ぶ料理だと、よく言われます。脂で埋め尽くされた丼ぶり、啜ることさえ困難である極太面、そして一食にかかるカロリーは2,000kcalを超えると言われる、超不健康な料理。万人受けしない理由も頷けます。

でも、それでいいのです。他所は他所、うちはうち、それがラーメンが今日まで発展してきた理由になるのです。

私はラーメン二郎が大好きです。だから、多くの方にラーメン二郎の良さを共有するために、このファンサイトを発展させていきたく思います。

2020年4月1日更新

執筆者:yoshi-kky

Filed under: 二郎コラムTagged with: ラーメン二郎, 二郎クエスト, 二郎はラーメンではない

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